間隔反復(spaced repetition/分散学習)は、同じ内容を一度にまとめて覚えるのではなく、時間を空けて複数回復習することで、長期の記憶保持を高める学習法です。
10回続けて音読するのではなく、1日目・3日目・1週間後・1か月後というように、間を空けて同じ内容に戻ります。この「間を空ける」ことそのものが記憶の残り方を変える、というのが中心にある考え方です。
間隔を空けると、次に復習するときには少し忘れかけています。その思い出しにくさが、かえって記憶を強くします。詰め込み学習(集中学習)が試験直後には強く、数週間後には崩れるのに対して、間隔反復は逆の形を描きます。
実装としては、カードごとに「次はいつ出すか」を決めるスケジューラが要ります。Anki の SM-2 や、より新しい FSRS がその代表です。
出典は査読を通った研究に限っています。
Ebbinghaus は自分自身を被験者として無意味綴りを記憶し、時間経過に伴う保持率を測りました。これが忘却曲線として知られているもので、間隔反復の出発点にあたります。
ただしこれは1人の被験者による自己実験で、扱ったのは無意味綴りです。実際の語彙学習にそのまま当てはまる保証はありません。
Cepeda ら(2006)は言語的な想起課題の分散学習研究を統合し、間隔を空けた学習が集中学習より保持率で優れることを報告しています。個々の実験ではなくレビュー・量的統合であるため、単発の研究より強い根拠になります。
Cepeda ら(2008)は、最適な復習間隔が固定値ではなく、テストまでの期間に応じて変わることを示しました。長く覚えていたいほど、間隔も長く取るのが有利になります。
🔴 ここが実務上いちばん重要です。「◯日おきが正解」という単一の答えは存在しません。だからスケジューラが要ります。
Settles と Meeder(2016)は、Duolingo の大規模な学習ログから記憶保持を予測するモデル(HLR)を学習し、間隔決定を機械学習の問題として扱いました。以降のスケジューラ研究の基準点のひとつです。
間隔反復の名前で語られることのうち、根拠の弱いものを挙げます。
Cepeda ら(2008)が示したのは、最適間隔がテストまでの期間に依存するということです。どこかで見た固定表が自分の目的に合う保証はありません。
Ebbinghaus の実験は被験者1人・無意味綴りです。「20分で42%忘れる」のような数値を、外国語の単語学習にそのまま持ち込むのは飛躍です。
検証されているのは長期の保持です。学習に要する総時間が短くなることを示した結果ではありません。短期の試験対策としては、詰め込みのほうが有利な場面があります。
「復習タイミングの予測が当たる」ことと「その人の成績が上がる」ことは、測っているものが違います。私たちが公開しているのは前者です。
LangDict は間隔反復を採用し、その判断が正しかったかを予測精度で検証しています。
「最適な間隔は状況によって変わる」以上、固定表ではなくモデルで決める必要があります。LangDict は独自モデル Lexa が次の復習日を決めます。
Lexa は、予測したいカードだけでなく同じ利用者の他のカードの履歴を文脈として読み込みます。これによりユーザーごとの再学習なしに個人化します。
公開3ベンチマーク(Anki / Duolingo / maimemo)で FSRS-7 のデフォルト設定と比較した結果を、評価指標・データ分割・スコアごと公開しています。比較しているのは記憶保持の予測精度で、学習成果ではありません。
LangDict を見る →Lexa の研究レポート →Ebbinghaus, H. (1885). Über das Gedächtnis: Untersuchungen zur experimentellen Psychologie. Leipzig: Duncker & Humblot.
掲載しているのは、著者・年・掲載媒体を現物で確認した文献のみです。査読誌の論文は巻号ページまで Crossref で照合しています。
最終更新: 2026年7月